雲仙岳災害記念館 がまだすドーム

文字サイズ
  • 標準
  • 拡大

噴火の予知と防災

「数百年に一度」にどう備える?

「災害は忘れたころにやってくる」ということわざがある。そこには、いきなり襲ってくる災害への恐れと、ふだんのくらしのリズムとは異なる、大自然の長い時間をかけた大きな変化への驚きがこめられている。しかし災害を前にしてただ感動しているわけにはいかない。かけがえのない命や財産を守るため災害をあらかじめ予測し、しっかり対策を立てて実行することが大切だ。火山と上手につきあっていくためにも、噴火の予知と防災の役割はとても重い。

全ては観測から始まる

静寂をとりもどした平成新山
静寂をとりもどした平成新山

風邪を引く前に、身体がだるくなったり、鼻水やくしゃみがでたりするね。それは身体の調子がおかしくなっていて、やがて本格的な病気になることを伝えるシグナルなんだ。噴火の前にも大地はさまざまなシグナルを出している。それらを見逃さないように、火山のまわりではさまざまな機器が大地の変化を観測している。そこから得られたデータは、噴火を予知し、万一への備えを用意するための基本的な情報となる。

振動を観測する

写真提供:九大地震火山観測研究センター
写真提供:九大地震火山観測研究センター

噴火のきざしはまず地面の下で起る。マグマが火口に向かって上昇し始めると、色々な種類の振動が観測される。そこで地震観測は噴火予知の基本とされている。

地震
写真提供:九大地震火山観測研究センター
写真提供:九大地震火山観測研究センター

噴火が迫ると噴火地点の近くでは、震源の浅い地震が集中的に起ることが多い。しかしその回数や地震が続く期間は、これから起る噴火の大きさや種類と明らかな関係があるとまではいえない。けれども地震の規模は、噴火が破壊する範囲にほぼ対応している。

火山性微動

地震計がとらえるごくわずかな揺れは、噴火の規模や移り変わりを判断するうえで非常に良い目安となる。また地中のマグマ、ガス、水などの移動を示す材料ともなる。

地表を観測する

噴火は地下のマグマが地球の表面をめざして上昇する動きとも考えられる。その動きは地球の表面を覆う地殻に影響をあたえるはずだ。それは精密な計測機器でなければ分からないほどのわずかなものである場合もある。

火山性微動

噴火の前後には、火山一帯のマグマの動きを反映して地殻が隆起したり反対に沈降したりすることがある。これは一定の地点の高さの観測を続けることでわかる。また地殻が伸びたり縮んだりすることも知られている。これは2点間の距離を続けて測ることでわかる。

重力

マグマが火山に向かって移動すると、その地点の重力がわずかに変化するとされている。そこで火山の周辺の精密な重力観測が、噴火予知を目的として行なわれている。

電磁気を観測する

火山を形作っている物質の中には、磁気を帯びていたり電気的な性質を持つ鉱物がある。たとえば地下の温度が上がると周囲の磁気を帯びた物質は磁性を失う。またマグマが入り込むと、地下の電流は流れやすくなる。火山活動にともなうこうした変化を観測することで、電磁気という大地からのシグナルを活用することができる。

ガスと熱を観測する

写真提供:九大地震火山観測研究センター
写真提供:九大地震火山観測研究センター

火口から上がる雲煙の勢い、量、色、あるいは火口のまわりの植物の様子、温泉や井戸水の変化は、古くから噴火の前兆を示す現象として知られてきた。今では火山ガスを採取してそこに含まれる成分を分析したり、地表や地下の温度変化を測定することで、火山活動をとらえようとしている。