雲仙岳災害記念館 がまだすドーム

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火山とは?

そのおそろしさ、そのおもしろさの正体

地球には私たちのくらしや生命に害を与えそうな火山がおよそ1500あるんだ。そして5億人以上の人々が、火山がもたらす災害を受ける範囲に住んでいる。

「どうして引っ越さないの?」と君たちは首をかしげるかも知れない。それはとてもいい疑問だ。答えが知りたかったらこの建物(雲仙岳災害記念館)の外に出てみよう。
そしてあたりを見回してみよう。何が私たちの目をとらえるだろうか。

まず荒々しい山肌を見せる平成新山を中心とした雲仙火山があるね。でも視線をふもとの方に向けると、そこには森があり、田畑があり、それらの緑に囲まれた家々がある。さらに有明海が大きくひろがっている。

仁田峠第二展望所よりパノラマ

美しいだろう? 豊かだろう? こんなに美しく豊かな風土から、離れることはできない、とここに暮らす人々の多くは言う。これが答えなんだ。火山がもたらす災害は恐ろしい。けれどもその一方で火山は、こうした贈り物ももたらしてくれる。だから人々は、火山とともにくらすことにこだわり続けるんだ。

”うちに秘めた炎”、それは地球が生きている証拠


球の内部の構造図

私たちがいま立っているこの大地の下、3000kmにあるのが地球の中心核。それは6600度の熱いかたまり。よく地球のことを「水の惑星」とか「緑の惑星」と呼ぶけれど、中心では地球は「熱い惑星」であり「燃える惑星」なんだ。もし中心部が冷えてしまったら地球はどうなるだろう? それは地球が多くの生命を育てる力を失ったということになる。つまりそのとき地球は「死の惑星」となってしまうんだ。

火山が”いのちの炎”を地表に運ぶ=火山の恵み


地球の内部の構造図

中心核の外側の層がマントル。マントルは地球の表面を覆う地殻のすぐ下から深さ約2900kmまでの間を占めている。マントルはふつう、非常に高い圧力のために高温の固体の状態にある。圧力や温度が変化するとマントルは地表に向かって上昇を始め、固体からどろどろの状態になる。これがマグマ。マグマが地表に噴き出す現象を噴火、噴火から生まれた地形を火山と呼ぶ。火山の活動は山をつくりあげ、新たな陸地を生みだす。それだけではない。マグマはあらゆる生命に欠かせないミネラルを、地球の内部から地表に運ぶ。私たち人間の身体にある原子の多くはもともと地球の内部にあったもの。それを地表まで運んだのも火山の活動なんだ。日本は国土の15%を火山 から噴き出したものによって覆われている。火山国ということがここからも分かるよね。

火山はエスカレーター

火山の内部のマグマだまり

マグマによって地球内部から新しい物質が地表に運ばれる。つまり「緑の惑星」の土台は火山がつくった。また噴火は大量の水や二酸炭素のような物質を地球内部から運んできた。地球誕生後最初の海はこれによってつくられ、最初の生命もここから発生した。つまり「水の惑星」も火山があってこそなんだね。

鉱物資源と火山

金・銀・鉛・亜鉛・銅など人類にとって役に立つ鉱物は、ふつう岩石にはごく少ししか含まれていない。ところがそれらの鉱物は、「鉱床」として一ケ所に集中していることがある。これも火山の恵みだ。マグマが地表に近づくとその熱によって地下水が沸騰し、鉱物と反応してそれらを水の中に溶かしこみ、溶かしこんだ鉱物を一カ所に集めて「鉱床」をつくる。おかげで人類はそれらを鉱物資源として効率良く利用することができるんだ。

火山灰地は役に立たない土地なの?

91年(平成3年)9月19日

噴火はたくさんの火山灰を広い地域にまき散らす。火山灰がまだ新しい場合は、確かに農業にはむいていない。けれども風化が進み、地中で分解された有機物が十分混じり土壌化すれば、火山灰地は農業に最適の土地になるんだ。

日本人のこころのふるさとには火山がある。

湯江川流域

日本の国立公園27の半数以上が、カルデラ湖など火山活動が生んだ景色を大きな理由として指定されている。火山は地形としては新しく、湖水にめぐまれ景色が変化に富み、さらに普通の山地に比べて起伏がゆるやかだ。人をひきつける温泉も火山活動のおかげ。他にも志賀高原、蔵王、ニセコなどのスキー場、伊豆川奈、那須などのゴルフ場も火山の斜面を利用したものなんだ。また火山がつくるスケールの大きな山すそには、雲仙をはじめ軽井沢、御殿場、箱根のように古くから避暑地、保養地として知られたところが多いよね。

次世代のエネルギー源=マグマの熱を利用する。

雲仙地獄

温泉につかってあたたまる、温泉の熱湯で卵をゆでる。ここで起っていることは物理学でいえば熱交換ということになる。つまりマグマの熱が、熱いお湯に変身しているんだ。地熱発電も、ねらいはマグマの熱エネルギーを電気というエネルギーに変えるところにあるんだ。残念ながら地下の高温・高圧という条件のもとで、安定した効率のよい熱交換システムをつくる技術がまだ完成していないために、火力、水力、原子力といったこれまでの発電に対抗できるようにはなっていない(地熱発電は日本で使用される総電力量の0.1%)。けれども地下のマグマの量とクリーンなエネルギー源であることを考えると、次世代のエネルギーとして大きな期待を集めている。

火山のかたちはなぜ違う?

火山のかたち(サイズ、スタイル、内部の構造)は、マグマの粘り気の度合い、噴き出すマグマの量、噴火の継続時間、火口のかたち(穴のようなかたちか、裂け目か)、噴火が起こった場所(地上か海中か)、などさまざまな条件によって決まる。

マール

マグマと地下水が触れたために起る爆発(マグマ水蒸気爆発)によって、地表にすり鉢状の穴があき、吹き飛ばされた物質が周囲に積もったもの。噴火がおさまると地下水が戻って火口湖となる。秋田県男鹿半島の一の目潟、二の目潟、三の目潟や蔵王の湯釜火口が代表例。

火砕丘(噴石丘)

マールが低い噴出物で囲まれた凹みであるのに対し、弱い爆発が続いて、火口の周囲に噴き出したものが高く積もってできた円錐形の丘をこのように呼ぶんだ。ふつう200~300mの高さで頂上には火口がある。阿蘇山の米塚が代表例。

溶岩円頂丘(溶岩ドーム)

粘り気のある溶岩が噴き出した場所の上に高く盛り上がってできたドーム状の地形。平成新山、眉山、昭和新山が代表例。

成層火山

くりかえし噴火した溶岩や火山灰、火砕流などが重なってできた円錐形の火山。もっとも多いタイプ。富士山が代表例。

盾状火山

粘り気の少ない溶岩が繰り返し流れ出てできる10度以下のなだらかな傾斜をもった平たい火山。伊豆大島が代表例。

溶岩台地

粘り気の少ない溶岩が大量に続けて何度も噴き出してできるテーブル状の広い台地。ときには全体の厚さが数100~1000m、広さが数十万㎢におよぶこともある。デカン高原(インド)がそうだ。

火砕流台地

大量の軽石と火山灰から成る火砕流が繰り返し噴出されてできる台地。シラス台地(鹿児島県)がそうだ。

カルデラ

火山にできた直径2km以上の凹型の地形。火山が大量のマグマを噴出したあと、地表の陥没、火山の崩壊、侵食作用などによってできる。もともとの語源は鍋。鍋の縁にあたる部分を外輪山、鍋の中にできた火山を中央火口丘という。浅間山(群馬県)がそうだ。我が国でもっとも大きなカルデラは阿蘇カルデラだ。

火山列島はなぜできる?

日本列島は別名火山列島と呼ばれるほど火山が多い。
日本列島に限らず、世界中のあちこちに火山が連なっている地帯がある。このことからわかるのは、火山が生まれやすい地帯とそうではない地帯が地球上にはあるということだ。

なぜこんな違いが起るのか、それを説明してくれるのがプレートテクトニクスという理論なんだ。
地球の表面を覆っている地殻はひとつながりではなく、プレートと呼ぶ20ほどに分かれた厚さ60~100kmの堅い岩板からできている。火山はこのプレートの境目にそって生まれる。

実はプレートは一年に数cmから20cmほどの速度で別々の方向に動いている。だからプレートの境目では、プレートが折り重なったり、引き離されたりしている。つまりここでは地殻がとても不安定な状態となっているんだね。マグマはそこの地下深くで発生し、上昇して地表に噴き出すので、火山は連なることが多くなるんだ。


日本列島とプレート

プレートの構造